藤井さんへのインタビュー

ーアスパラを育てる際のこだわりを教えてください。

 

一言では言えない…かな。常に進化もしてるし。だから「今年はこれをチャレンジしよう、来年は…」みたいに毎年変わっていくね。

 

こだわりというか、うちの特徴といったらアスパラをほとんど自分のところで販売していること。収穫物をJAに持って行って自分は生産に集中するのが一般的だけど、うちはそうはしない。

 

ここにもアスパラが詰まったゆうパックが入っているんだけど、これを例えば旅館にも卸してるし、すぐそこで言ったらまむしの湯にも卸している。家に大きな冷蔵庫があるから、新鮮なうちに予冷をかけて良い状態で送れるようにしてる。

(予冷:野菜や果物の鮮度を保つため,出荷や貯蔵に先立ち摂氏3~5度にまで冷却すること。)

 

←アスパラガス用選別機

 

ここでサイズ分けをする。ほんとはこれ、JAとかにあるっちゃんね。普通のところはJAに持っていったらJAがやってくれて、全国に行くって感じなんだけど、うちはこういう風に売ってるから。まあ、こだわりというか、こだわらないと売れないよね。

どんなこだわりがあるんですかって言われてもむちゃくちゃありますって。

 

販路の広げ方

 

もう、紹介紹介だね。

まずは売り込みにかける。「買ってください。」って言うんだから、そんな値段は強気に出れない、送料もね。こういう商売してるとそういうことになるっちゃんね。

それじゃあ農産物はとても販売できないから、なるべくこの畑に来てもらって、採れたてを食べてもらう。採れたてって絶対美味しいから。みずみずしいし、甘いときは甘いし。3月から9月まですごい長い時間採れるんだけど、甘い時期もあれば硬い時期もある。季節によって味の特徴が違うんよね。そういうことを説明しながら食べて貰ったら、相手にも「おいしいね。」って言われて、取引に繋がることもある。

 

4月後半の作業について

 

この時期一番重要な作業は、立茎作業。伸びてくるアスパラの中から親木にするアスパラを選ぶ作業なんだけど、これが大事な作業で。4万から5万本くらいのアスパラの中から1本ずつ選ばないといけない。収穫も同時にあるから大変でね、ものすごく朝早くから、夜ギリギリまで選別してる。自分でするしかないからね。

 

それを今やってるっていうのと、親木にすごく養分を取られるから、アスパラの供給量はどうしたって落ちてくる。アスパラはGW辺りに人気が出るんだけど、供給量は落ちてくるから、そういった意味ではすごく複雑な時期だね。

 

ちなみに、九州はハウスがメインだからアスパラのピークは3月。まだ朝寒いから。寒いと野菜って甘くなるでしょ。特に下の方が甘くて上の方にはアスパラ独特の苦みがあって、良い味になる。アスパラって暖かくなると食べたくなるけど、実は3月が一番おいしい。

 

アスパラはみずみずしさも大事だから、来年の事まで考えながら立茎作業をする。遺伝するから、来年の人気とか需要を考えてね。そういうのもこだわりかな。

 

ー1日にどれくらい採れるんですか?

 

1日朝晩で100kgくらい。3月の半ばには毎日200kg採れるよ。

 

農繁期と農閑期について

 

1月から大体9月くらいまでが忙しくて、10月くらいからは農閑期。11月、12月は休みであんまりする事ないから好きな事してる、っていうライフスタイル。そういうライフスタイルが好きで農家になったっちゃん。 

 

これから挑戦していきたいこと

 

もう少しハウスがあるから植える量を増やしたいな。ちょっと尖った違う品種を植えたい。紫色のアスパラとか。その分、量が採れないっていうようなデメリットはあるけど、だから作れないかって言われたらそんなことはない。それ(紫アスパラ)は直販用にするとか、ギフト用にするとか。ちょっとしか入ってなくても3000円くらいで売れるけんね。

 

珍しいし、間違いなくアントシアンが多くておいしい。新鮮なうちに送れる体制がつくれるというか。今のアスパラが汎用性があるアスパラだとしたら、今度はそういう感じの尖ったやつを作ってみたい。

 

就農までの経緯

 

加茂さん家で研修を始めて2年半くらいたったある日、岩城さんっていう知り合いのアスパラ農家さんに「福吉にハウスがあるから借りない?」って言われて。それで、「どこにあるんですか」て言ったらそれが加茂さんちの横のハウスやったんよね。

 

結構な面積で10年間くらい育ててたみたいなんやけど、そこの人が辞めるから売りたいと。で、取り合えずハウスがあったらなんとかやっていけそうやったからそこでアスパラを育てることになった。

 

ーもともとアスパラガスもハウスもあった状態で始められたんですね。

 

そう。でもね、もともとアスパラガスって10年たったら経済性が落ちるから、悪い圃場じゃ植え替えなきゃいけないって言われてるんよ。で、一度植えたら2年かかるけんね。1年目からとれるわけじゃないけん、今年植えても再来年、お金が入ってくるのは農業だからもっと先になる。だから簡単に植え替えとかできんっちゃん。本当に収入が0になるからね。

 

でも始めてみたら、そこの圃場は辺り圃場で、今19年目に入ってるけど、いまだに糸島1とれてる。ま、それが唯一運が良かったかな。

 

ーいくら永年作物っていっても肥料はいりますよね

 

勿論。結局最後は土づくりなんよね。アスパラにどんどん(養分を)吸われるから。だから本当は10年ぐらいしかもたないんだけど、でも(うちの畑は収量が)落ちない。それはなんでかっていうと試行錯誤してやってるからじゃないかな。前のオーナーさんがどっちかっていうとオーガニック志向やったのもあるけどね。

 

害虫対策について

 

もうすぐね、虫が入ってくるから農薬を使わざるをえんけど、春は一切使わない。アスパラ防草シートってのを全面に貼ってるんだけど、あれをするだけでアブラムシがはいってこんくなったね。必ず春先に入ってきてたんだけど。

 

昆虫好きだし、とにかく虫との共存がしたい。

アスパラの圃場にたくさんいる小さな虫たちも、結局土作りをしてくれるから。

 

アスパラの天敵になるような虫も勿論いるよ。スリップスっていうんだけどね。今は防草シートを赤く塗って、スリップスが壁と認識してくれるかを試してる。そういうのは挑戦だよね。それで農薬使わなくてすむならそれが一番良いからね。

 

 

ーありがとうございました。